「うめざわしゅん作品集成」 感想
社会に適応できない者、つまはじきにされる者、通常幸福といわれているものを享受する才能の無い者。
かれらのことを表現するにおいて、この漫画のあとがきにおいて著書は、作家の福田恆存(つねあり)の文章を引き合いに出している。
一俵の米を脱穀するとね、必ず10粒ばかりは脱穀されない穀粒が出るんだよ。僕の読者はね、その極く少数の脱穀されない穀粒なんだ。
そう、この漫画に共感する俺たちは脱穀されない穀粒。
どんなに「普通」というやつに恋焦がれても、到底到達できないものと知る。
それを普通側の人間から、未熟さ、脆弱さ、逃避的思考、苦痛を避けるための自己規定、そう批判される向きもある。
しかし、生存競争に適さない遺伝子を持ち、淘汰され緩慢に死んでいく個体にあって、
悪あがきをしたくなるときがある
その魂の怨嗟が吐き出されたものがこの作品集。
パンティストッキングのような空(後篇)p64
もはや、普通という奴に迎合して魂をすり減らすのにも飽きた。
だから、この漫画を読んで、魂の孤独の隙間を埋めるとしよう。