清水富美加 『全部、言っちゃうね。』 感想
「幸福の科学」への出家でメディアを騒がせている清水富美加が、ここぞのタイミングで出した告白本(この団体儲かるぞ~)
『全部、言っちゃうね。』 千眼美子 幸福の科学出版 2017.2.17
別に俺は清水富美加が特に好きなわけではない。演者として出ている映画もドラマも見たことが無いし、騒動になる前は顔と名前がかろうじて一致するくらいであった。
ではなぜ、告白本というその人間の本質に深く迫るような媒体を手に取ろうと思ったか、それはそう、
俺がどうしようもなくミーハーだからである
人気急上昇中の22歳というこれからの女優が、今まで積み重ねてきた全てを投げ捨て、丸坊主にして瀬戸内寂聴化せんとする(俺の勝手な出家のイメージ)というセンセーショナルな話題にメディアが食いつかないはずがない。
ということで、二本釣りのごとく私も釣られたわけです。
そもそも「幸福の科学」とはなんだろう?俺の生活圏内にたまたま、立派な佇まいの支部がある。愛を謳うだけではお金は生まれない。なにかいかがわしいことでもやっていい思いをしているんだろう、と、その程度の関心した持たなかった。
困ったときのWikipedia。その情報によると、なんと、
世界100カ国以上に支部を持ち、会員数1200万人以上の巨大宗教組織で
あった!
地球神「エル・カンターレ」が地上に具現化したのが大川隆法総裁であり、キリストや孔子など、多数の神が融合して遍在しているという独特な解釈の多神教を教義とした、全人類救済を目的とする宗教である!
なんと偉大な宗教であろうか、よし、みんな、入信しよう!
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では本の内容にうつる。
13歳でスカウトされて芸能活動を始め、15歳の頃からグラビアの仕事が入り始
める。水着の仕事は抵抗があったらしい
こんなこと言ってもいいのか分からないですけど、水着の仕事って言ったって、おかずですよね。(中略)
いざ、握手会とか人前に行ったら、手がぬるぬるしているおじさんとかに、すっごい気持ちの悪い握手のされ方をする。
「この見知らぬおじさんが私の写真やDVDを観て家で何してるんだろう」とか考えてたらもう、ほんとに悲しくなって。(p40-41)
きっと繊細すぎたんだろう。
今ではジュニアアイドルと称し、小学生女児がその早熟すぎる豊満なバストを屈託のない笑顔と共に振りまいてカメラに押し付けているものも普通に存在する。
そんなご時世、15歳でグラビアは珍しくもないが、そもそもこの子には、男のいやらしい視線を集めてうれしいという子悪魔的な性格が欠けていたのだろう。
そしてこの人は、本当に頑張り屋さんである。
役作りのために、飛んでいるハエを捕まえて食べてみたり(いや、どんな役だ
よ!)
苦手なグロ映像を毎晩金縛りにあいながらも見続けたり..
・・・
..やつれた役を演じるために奥歯を抜いた故松田優作ばりのストイックさである
ニュースでも言われていた、給料が不当に低すぎる件に関して。
確かに、仮面ライダーのヒロインをやっていたころ、朝4時入りで夜遅くまで撮影、1ヶ月休みなしで月給5万円というのはさすがに低すぎるような。
元々は歩合制だったが、事務所からの圧力により半強制的に給料制にされて、撮影終わりには交通費も支給されず、ヒッチハイクをしながら帰ったとか(..危ない!)
そもそもの入信のきっかけについて。
両親が「幸福の科学」の会員であり、子供の頃から入信していて身近な存在であった。
辛くなると近所の支部に出かけて行って相談をし、今までに何回も精神的に助けられていたという。
その精神的土壌があって、今回の出家に至る。
きっかけは何なのか、それは、一つの出来事がトリガーとなったわけではなく、芸能活動から来る慢性的な苦悩が限界線を振り切ったということ。
「いや、これから先、人間として生きてる人たちに霊的に見て悪い影響を与えたり、悪魔的なものの力に加担してしまうような作品に出てしまう可能性があるなら、それは私にはこれ以上できないです」っていう話をしたら、マネージャーさんはすごく困って、もう意味わかんないって感じでした。 (p76-77)
出演作品が、「HK変態仮面アブノーマルクライシス」とか(なにそれ見たい!)、「リアル鬼ごっこ」とか、エログロ系の役が多かったのだろう。
確かに、佐藤姓の人間たちが殺し合ったり、人を啓蒙できる作品ではないw
今年の4月1日公開の「暗黒女子」が最後の公開作品になるのか..
我々はしかし、「千眼美子(せんげんよしこ)」という別な名前で彼女の活躍を見れるかもしれない。
というのも、「幸福の科学」は自主制作映画をその宣伝媒体として多く活用している。
団体は今回、これ以上ない主演女優を獲得できたのではないだろうか。
本人も、映画出演などによる広報、布教活動に励みたいと宣言している。
最後に「千眼美子」という法名について。
今回いただいた千眼美子という法名については、「千手千眼観音」に由来すると言われても、「手は二つやし!」って感じで、まだちょっと自覚がなくてわからないんです。(p139)
仏をもおそれないツッコミ、いただきやした。
ユーチューブで動画を見たが、彼女がバラエティで見せるユーモアな一面は、なにか惹きつけられるものがある。
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出家について、今でなくてもいいじゃない、せめて契約中の仕事を消化してからでも..という声も聞かれるが、本人は、これ以上少しでも続けたら死ぬという心身的にスレスレの状態であったという。
自分の命を守る。そのために、強い葛藤を振り捨て出家した彼女を誰も責めることはできないはず。
心を削り取られながらも、這いつくばって生きなければならない芸能界という現世の地獄で苦しむ人たちに、今いる環境を抜け出す新たな視点、もう少しの勇気というものを与えられる、彼女の出家はそれだけでも意義があったのかもしれない...