『THE WORLD IS MINE』 2巻

 2巻目に突入

  

  f:id:boriokun28:20170130172210p:plain

 表紙の女は、1巻で登場し、2巻目ではトシモンに加わろうとする女性、マリアちゃん。

 

 帯のコメントの一人は小説家 阿部和重

 これは、壮絶なまでに徹底した描写の追求によって「世界」の連続性を

描き出す、きわめて倫理的な作品である。

 

 ――テロ事件の犯人として身柄を捕らわれている爆破犯「トシ」を救出するため、

  警察署に対する大規模テロを敢行した超人「モン」。

   多くの警察官を殺しながらの救出劇は成功を遂げ、トシモン2人の逃避行から

  再開する、『TWIM』第2巻。

   寒さと疲労から意識を手放そうとするトシを背負い、青森県山中を進むモンで

  あったが、とうとう、神が生み出した悪魔の片割れ、体調12メートルの怪物

     ヒグマドン

  と邂逅する。

   圧倒的な存在を前に、トシはそれまで知らなかった「畏敬の念」を喚起され、

  自分を超越した暴力に初めて対峙したことで「痛み」を知り、それ以降人を殺す

  ことが出来なくなる。

   それまで依存してきた絶対的な存在が、良心や想像力という俗な観念に影響さ

  れ始めていることに不安と憤りを感じるトシであったが、既に引き返すことはで

  きない。

   自分を肯定するために、ネットに「殺人代行」のホームページを立ち上げ、世

  の中の悪意を浮き彫りにし、良心不在の社会を再確認する。

 

    ―ここで、爆破犯トシの母親に視点が変わり、極普通の主婦が息子の犯行を

     知り、世間に非難され、発狂し、自殺に至るまでのエピソードが挿入され

     る。

    ・・・この話が、またエグイ笑。

   「うちの子にかぎって」という信頼が、犯人顔写真のニュース報道により疑念

  に変わり、警察署に出頭させられ、証拠を提示されることで息子が大量殺人犯だ

  という事実を突き付けられる。

   事実を受け入れられずに、やがて発狂に至るまでの描写が、読んでいてただた

  だ苦しい。

   だがこのエピソードが、犯人側の家族を自殺に追いやる世間やメディアを描く

  ことで、一方だけの視点ではない、両方の立場に立つ想像力を掻き立てるという

  作用を生じさせることに成功している。

 

  話は戻り、世間では「殺人代行」のホームページに大量の殺人依頼が殺到したこ

 とが社会的問題となり、緊急番組が開かれる。

  そこに、1巻で登場したユニークなオッサン総理、由利勘平が再び登場し、テロ

 リズムに扇動される視聴者に対し

    想像力の欠如

 を問題提起する。

  話の内容こそ「想像力を持て」という普遍的なものだが、

   中指をカメラに向かって突き立て、死体の入った棺桶を蹴り上げる

 というクレイジーな方法が視聴者の関心を掻き立てる。

   想像力のない馬鹿どもは死刑だ

 というメッセージを受け取ったトシの

   神のみぞ知る、試そやないか

 のつぶやきで幕を閉じる第2巻。

 

  物語の展開は怒涛の1巻に比べて失速するが、個性的な登場人物も多く、相変わ

 らずの面白さ。

   仲間に加わろうとする女性マリアの存在もあり、今後どう物語が進展していくの

 か、わくわくである。